私は桐朋学園大学院大学を卒業後、渡欧し、ウィーン市立芸術大学(Musik und Kunst Privatuniversität der Stadt Wien)の修士課程(Master of Arts)へ留学しました。
以前から、生徒さんに留学について質問されることがありましたので、留学についての記事を書かせていただきます。
留学の仕方は千差万別だと思いますが、これから留学を考える方の一例として参考にしていただけたら幸いです。
1. 留学を志したきっかけは?
私は高校から桐朋学園の音楽科に入りました。実技レッスンのみならず、音楽史や音楽理論、古典舞踊など、西洋音楽を様々な側面から学ぶにつれ、自分もいつかクラシックの本場に身を置いて勉強したいと思うようになりました。
母校では高校・大学卒業後に留学する人が多く、また、海外で活躍する著名な演奏家・教授が公開レッスンをしによく来校されていました。
そのような環境にどっぷり浸かっていたので、自然と留学を考えるようになったのだと思います。
2. 留学前に短期研修や講習会に行きましたか?
夏休みを利用して、海外の音大が主催する国内の講習会に何度か参加しましたが、良いご縁には恵まれませんでした。
大学卒業後もどこかの教育機関で音楽の勉強を続けたいと願っていたので、大学院へ進む選択をしましたが、希望した大学院に落ちてしまいました。
進路には悩みましたが、そのまま大学のカレッジ・ディプロマコースに残ることにして、一年間院浪することにしました。
とはいえ、留学の夢も捨てきれなかったので、大学卒業後の春休みに初めてウィーンの春期講習会に参加しました。
ウィーンでは、2週間という短い期間でしたが、大変充実した日々を過ごしました。
レッスンと練習時間以外は自由時間だったので、カフェ文化の発祥地と言われるウィーンでのカフェを楽しんだり、ふと立ち寄った教会内でオルガンの音を聴いたりと、クラシック文化が根付く街を堪能することができました。
以前にもヨーロッパ諸国へ行ったことがありましたが、オーストリアは海外の中では比較的治安が良く、「留学するなら絶対ここにしたい」と思えた初めての国でした。
講習会で担当してくださった先生は教育学科の先生だったので、ピアノ科の先生をもう一度探すことにして、帰国しました。
それから約1年後、桐朋学園大学院大学の合格を得て、再び単身渡欧しました。
その時は講習会ではなく、留学斡旋会社を通して自分で習いたい先生を選択し、レッスンを受けに行きました。
そこで出会ったのがウィーン市立芸術大学でお世話になったKarl Barth先生です。
Barth先生の指導法や奏法、理想とする音楽の方向性が自分に合っていたこと、先生の大変温かい人柄に惹かれ、もし留学できるとしたら先生につきたいと心に決めて帰国しました。
しかしながら、大学卒業後から師事した、素晴らしい演奏家でもある若林顕先生のもとで引き続き学びたかったことから、日本の大学院でもう2年勉強し、その後Barth先生が教鞭を執る大学院の入試を受けることとなりました。